来世の配属希望

 

「来世何になりたい?」

休憩時間、向かいに座っている同期が突然こんな話を振ってきた。

彼女いわく来世は水族館のアシカに生まれ変わってイケメンの飼育員に可愛がられるのが最善らしい。やさしい僕は「倍率高そうだから今のうちに徳積んどきなよ」とアドバイスをしてやった。

 

しかしこれもまた彼女が言ったことだが、個体数でいえば世界に溢れる命の多くを占めるのは虫の類いらしい。すなわち、うかうかしていると来世は少なからぬ確率で虫になるのだ。気になって調べてみるとアリ科だけでもその個体数の単位は100京にものぼるとか。少なめに見積もっても人に生まれ変わるよりアリに生まれ変わる確率の方が1億倍は高いというわけだ。困る。

 

であればさっさとこの人生に見切りをつけて、ウサギとして生を受けた頃のブッタのように聖者に命を差し出しでもすれば、負け続きの人生でも転生競争くらいには勝てるかもしれない。

 

さて、それじゃあ転生するなら何がいいだろう。個人的な希望を書き出していくのでみなさんも転生する際の参考にしてください。

 

 

①ペット類

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人間に不向きであることを実感している人であれば一度は、動物園のパンダに憧れたことがあるのではないだろうか。先述のアシカもこれにあたるだろう。彼らを代表とするような「飼育される生き物」というのは社会に適応する必要もなければ、野生の厳しさも知らずに生きられる。その可愛さのみを理由にして、ただ生きているだけで絶大な価値を持つ、オタサーの姫の最終形のような存在だ。憧れる。

 

では倍率はどのくらいのものだろう。飼われる生物の筆頭、犬と猫について考えてみる。日本で飼われている猫の数はおよそ1000万匹弱くらいらしく、犬はそれよりもすこし少ない。犬猫以外にも掃いて捨てるほどの種類の生き物が人様に飼われているが、ペットの二大巨塔ともいえる犬と猫を足しても2000万匹に届かない。それらの有象無象を足して、さらに話を世界まで広げてもせいぜい人間の1/10くらいなんじゃないだろうか、狭き門である。

 

②人間

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「やっぱり人間っしょ。」

そう言いたくなる方たちの気持ちも痛いほどわかる。下手な野生児よりも人間に不向きな僕ですら、(サブ)カルチャーに触れ、人と話すたびに人間として生きる悦びを多少なりとも感じている。猫になりたいと思うことこそあれど、猫になったら最後ハンターハンターの続きを永劫知ることができないと思うと考えを改めざるを得ない。 

 

倍率は先述の通り、蟻になる1億分の1の確率だ。その中でも恵まれた環境に生まれ、ヒトであることに満足できる人間になれる確率まで考えると、①の飼われる生き物と大差ないのかもしれない。来世も人間になれたとして、またこんなサブヒューマンに育ってしまおうものなら蟻に生まれ変わったほうがまだマシだ。

 

③海洋生物

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現世を人間として生きているゆえ、陸棲生物の世界なんて高が知れた気でいる。自由気ままに飼われる猫になろうと、檻の中でくつろぐパンダになろうと、その視界の景色は想像がつく。

 

だが海の世界は想像にすら容易くない。未知は神秘である。深海魚の世界なんてなんとも面白そうじゃないか。あるいはサメやシャチなどに生まれ変わろうものなら、なろう系も面食らうほどの転生無双ライフを送れる(勿論雑魚に生まれてしまえば目も当てられないが)。

 

種族差が激しく、生存競争も厳しいだろうが、現世と180°違う世界に生きるというのもやはり憧れる。

 

倍率はというと、海洋生物の割合はなんと陸上の生物のたった1/80らしい。思っていたよりエリートコースのようだ。しかし陸上の生物の8割強は虫とかいう底辺であるため、まともな陸上生物になるよりかは海洋生物の方が確率が高そうなので狙い目です。

 

④植物

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カウントするべきか迷ったが、彼らだって立派な生き物だ。動物の、しかも人間に生まれた以上、何も考えずに生きる植物の生活というのも些か想像し難い。とはいえ何も考えずに生きることができるというのも、それはそれで魅力的だ。人間は余計なことばかり考えるので。

 

問題はその倍率である。某所の研究によると、世界中の生物における動物の割合はたったの0.5%らしく、対する植物の割合はなんと80〜90%にものぼるとか。

 

はいここまでの話ぜんぶ台無し。人間の100億倍いるアリも含んだ全ての動物のさらに200倍ってこと?インフレし過ぎておもんないぞ。その研究間違っててくれ頼むから。ていうか目を背けてたけどアリの時点で相当インフレしてるんだよな。

 

虫までならまだ良かった。どうせ虫に生まれ変わってもすぐに死ぬから次の転生に移れるだろうし。でも植物って長生きするじゃん。木とかだと100年越え1000年越えとか割とあるでしょ?なったら終わりじゃん。

いやでもやっぱり樹齢長い系の木はそもそも準ブッタくらいまで徳積んでないとなれないのかな。雑草になって除草剤で即死くらいが関の山かもしれない。

とにかく、進路としては植物がどうにもメジャーなようなので、来世のライフプランを立てるのなら、草木としての生き方を考えておくべきなのかもしれない。

 

 

というわけで、来世について色々と考えてみたわけだけれど、今より希望のある生き物に転生するのは思っていたより随分と難しいらしい。

ヒトもアシカもネコもシャチも望み薄過ぎる。こんなんでも人間に生まれるって凄いことだったんですね。くだらないこと考えてないで真面目に生きよう。

 

以上です、また来世の記事でお会いしましょう。