俺は中学生の頃大阪にマジで恋をしかけていた。
ここでいう大阪とは地名ではなく、あずまきよひこの著作『あずまんが大王』に登場する女子高生のキャラクターの通称だ。彼女は関西人だがどこかおっとりとぼけた性格をしていて、関西の出身というだけでクラスメイトから『大阪』という渾名で呼ばれている。
本作の中でも指折りで好きなエピソードに、修学旅行で沖縄(これは地名)に行く回がある。そのうちのワンシーンで大阪が首里城にある『おせんみこちゃ』に訪れた時に、その名称がツボにハマって爆笑する場面があり、俺はそのシーンを見た時に彼女のことが堪らなく好きになった。
もし俺が大阪のクラスメイトで、きっと学内行事以外では碌に会話をする機会もなかったであろう彼女が「おせんみこちゃー あはは あはははは」と爆笑する姿を目の当たりにしたならば間違いなくそれだけで惚れてしまうだろうと思う。
そして先日発売した氏の別作『よつばと!』の最新刊の書き下ろしに、実に25年ぶりに大阪が登場した。所謂クロスオーバーというやつだ。
読む前にSNSで幾らか感想が流れてきて、それらはネタバレに配慮してか『ビックリした』とか『やばい』とか『ありがとう』みたいな断片的なものだけだったが、作者本人の投稿の言葉選びが不穏すぎるのもあって妙に緊張感を抱きながらページを捲っていた。
そして件の最終話のサブタイトルと展開から「まさか」と思い、グラウンドで鉄棒を掴む彼女の後ろ姿を見た時には文字通り息が詰まった。なるほどビックリしたしやばいし「ありがとう」それしか言う言葉が見つからない。
『よつばと!』は描写の繊細さも相まって前作よりもずっとリアリティラインが高く、本当にこっちの世界のどこかにありそうな日常が描かれている。その世界に大阪が居る。大阪が25年前と変わらずとぼけた真似をしている。時空や次元を跨いで大阪が俺たちの方に近づいてきたみたいだ。それだけで俺はもうどうにかなってしまいそうだった。ルイズのコピペみたいな気分だった。
大阪は小学校の先生になっていた。『あずまんが大王』の作中ではクラスメイトのちよちゃんから「先生なんて向いているんじゃないですか」と言われていたが本当になっていた。これは凄いことだ。
いっぽう俺はもうすぐ29歳になるのに小学生のころに読んでいたのと同じまんがを読んで「大阪だ!大阪が出た!」と喚いている。正気じゃない。
わかってるねん
わかってるねんで?