備忘録のやつです。年跨ぎで書いたので去年のことを今年と言っています。
■Parakeet & Ghost / カーネーション(1999)
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カーネーション、18,000分聴いてました。
今年で活動40周年にもなる超長命ユグドラシルロックバンドことカーネーション、恥ずかしながら今年に入るまで触れることなくのうのうと生きてきた。さながらそのツケを支払うかの如く過去18枚の作品を引っ搔き回して聴き散らかしていたら18,000分経っていた。
アルバムとしての完成度でいうならば自他共に認める彼らの最高傑作『天国と地獄』とか、ゲストに迎えた"家主"の田中ヤコブの軽快なギターから始まる64歳のおじいちゃんが作ったとは思えない先々月リリースしたての19枚目の(おそらく)名盤『カルーセル・サークル』とか、語りたいものは山ほどあるのだけれど断腸の思いで一枚選ぶならば『パラキート・アンド・ゴースト』だろうよといった所存。
本作は19曲収録で70分越えの再生時間と、普段3,40分程度のアルバムを有難がってぼりぼりヘビロテしている俺にとってはなんだか敷居の高いアルバムだったのだけれど、アルバム全体を通してポップでありながらもサイケで実験的なテイストを多く含んだ奇怪な作品、つまり俺の大好物だったのでドン嵌りした。
その一方で#15『アンブレラ』は骨太なロックサウンドを鳴らし、#11『Strange Days』のような優れたメロディのバラード曲もアルバムの中核で存在感を放ち、まるで隙が無い。
そして何より素晴らしいのがこれだけやりたい放題やっていながら1枚のアルバムとしては取っ散らかっているどころか脱帽ものの構成力で非常に収まりよく纏まっているということ。19曲のうち7曲は2分未満のインストであり、それらをインタールードとして歌ものをセクション分けしたような全体の構成はまるで劇伴でも聴いているような気分になる。
個人的イチオシは#12『月の足跡が枯れた麦に沈み』。ミドルテンポのロックサウンドとして俺の中での一強であるピロウズのストレンジカメレオンに肉薄するほどの名曲。こんなに良い曲なのに売れないどころかロクに聴かれてもいないの悲しすぎるから聴いてよ。
Parakeet & Ghost - Apple Music
■Steppin' Out / KIRINJI(2023)
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小学生の頃に塊魂のゲーム中で流れるキリンジの曲を聴いてからというもののずっと細やかなキリンジのファンだったのだけれど、大学生の頃まで1〜3枚目のアルバムくらいしかロクに聴いてこなかった時に当時の最新譜『cherish』を聴いたらあまりの変貌ぶりに俺は大声をあげながらイヤホンを側溝にぶん投げてしまい、それ以来彼らとは距離を置いていた。
そんなキリンジの熱が昨年末くらいからまた沸々と湧き上がってきて、『愛をあるだけ、すべて』とかを聴いているうちに「KIRINJIも悪くないじゃん」などと偉そうに思っていたところに満を持してリリースされた現在の最新譜が本作『Steppin'Out』だった。
だから特別琴線に触れたというよりは能動的に聴きに行った感じのアルバムだし、普段の嗜好とだいぶかけ離れているのであんまり語れることもないのだけれど、何よりも本作のリリース後に観に行ったツアーの演奏が今年のベストアクトだったんじゃないかってくらいに良かったので挙げる。
個人的イチオシは#1『Runners High』。これもう一回生で観たい。
Steppin' Out - Apple Music
■SF / 入江陽(2016)
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敬愛するバンドをこの五指を折り曲げて挙げたとき、間違いなくそこに含まれる中にフィッシュマンズがいる。
入江陽もまたフィッシュマンズの影響を多大に受けているであろうアーティストの一人なのだけれど、初期~中期の『KING MASTER GEORGE』とか『ORANGE』辺りのおもちゃじみたポップさであったり、悪ふざけしたような軽妙で馬鹿馬鹿しい歌詞のテイストであったりだとかを踏襲したような、これまで俺が触れてきたフォロワーのミュージシャンとはちょっと違う角度でのフィッシュマンズっぽさも見せてくれるのが非常にうれしい。
『無人島 サンゴ礁 ぼんやり倶楽部 君とメイク・ラブ』とか言われても困るんだけどそういう詞の良さもあるし俺はそういうのが好きなんだ。
個人的イチオシは#2『5月』。日常の風景に少し浮遊感を足したようなサウンドと歌詞の世界観が好き。
SF - Apple Music
■サーフブンガクカマクラ(完全版)/アジアン・カンフー・ジェネレーション(2023)
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『マジックディスク』くらいまでのアジカンは中高生くらいまでの多感な時期に擦り切れるほど聴いたためにある種神格化されているので、正直はじめに本作の再録が出ると聞いたときには「いらんことしやんといてよ」などと偉そうに思っていたのだけれど、先行でリリースされた#3『柳小路パラレルユニバース』や#8『日坂ダウンヒル』を聴いてるうちに期待値は増し増していき、そして本作はその期待を凡そ裏切ることのない傑作だった。
既存曲に勝るとも劣らない新曲5曲もさることながら、オリジナル版を過去のものにしてしまいそうな程の再録曲たちが本当に素晴らしかった。
『サーフブンガクカマクラ』というアルバム自体が全曲に江ノ電の駅名を冠したコンセプトアルバムという少しお遊び感の強いものであり、確か音源も一発録りで録られてることもあって、当時の俺も擦り切れるほど聴いていたとはいえ楽曲的には『ファンクラブ』や『ワールドワールドワールド』のそれより深追いしていたわけではなかった。
そのせいか「由比ヶ浜カイトってこんな面白い構成してたんだ」とか「極楽寺ハートブレイクってこんなご機嫌なビートだったっけ」とか「鵠沼サーフの1サビ終わりのドラム暴れ過ぎでは」とか思って原曲と聴き比べてみると存外大差なかったりして、「俺ぜんぜんサーフブンガクカマクラちゃんと聴いてねえじゃん」と思い知らされるような再発見が多かった。
余談だけど本作のツアーで初めて生のアジカンを観に行った。本作の元ネタと言って差し支えない程のオマージュが散りばめられているバンドであるWeezerの『サーフワックスアメリカ』のカバーが演奏されたとき脳飛び出るかと思った。
サーフ ブンガク カマクラ (完全版) - Apple Music
■「NEEDY GIRL OVERDOSE」Soundtrack(2022)
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二年ほど前に大バズりしたインディーゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』、今さらながら今年の夏頃にプレイしたところ大ハマりした。
ゲームの概要をざっくり説明すると、NEEDY GIRL OVERDOSEは精神が病みがちで人一倍承認欲求が強い女の子を100万フォロワーの配信者に育て上げる育成ADVである。のはずが、30もあるマルチエンディングの殆どはバッドエンドと呼んで差支えのないような顛末を迎えるため、「この■■■をどうやったら幸せにしてあげられるんだ」と泣きながら悪戦苦闘を強いられることになる。
作中の精巧なピクセルアートに合わせてBGMは8bitサウンドであり、キャラのステータスによってマイナーアレンジ版が流れるなど芸が細かく、先述の理由から周回を繰り返すうちにBGMの中毒性から抜けられなくなってしまい、クリア後はこのサントラを聴きながら別のゲームをプレイする始末だった。
ゲームとしてはドラッグや性描写、自傷行為なんかがだいぶコミカルに描かれてしまっている点から賛否もあり、あんまり手放しで褒められたものでもないのだけれど、
育成ゲーム特有のスノーボールに成功した時のドーパミン飛び出る感じとか、平成のオタクにぶっ刺さる小ネタが幅広くニッチなところまで散りばめられていたりだとか、特定のエンディングでは昨今のインターネットの現状について考えさせられる部分もあったりとかで非常に面白かったです。
†昇天†
「NEEDY GIRL OVERDOSE」 Soundtrack - Apple Music
■次点
・石のような自由/家主
出たばっかなので次点入りだけど最近はこれしか聴いてないまである。以前KIRINJI堀込高樹と対談していたときに「キャリアを重ねるにつれて音が豊かになっていくことに懐疑的なので敢えてインディ感を強くするようにしてる」的なことを言っていて「ずっとそうあってくれ〜〜」と思っていたのだけれど、暫くはそうあってくれそうだなと感じられる一枚でした。
石のような自由 - Apple Music
・式日散花/ドレスコーズ
ドレスコーズ、『三文オペラ』あたりからちょっと離れていたんだけれど、去年リリースの『戀愛大全』のノスタルジックで歌謡曲感強めのテイストがかなり好みで、その『戀愛大全』の続編的な立ち位置でリリースされた本作はかなり期待値が高かった。蓋を開けてみれば前作より哀愁強めでいてベタベタな歌メロ、だけど一筋縄じゃいかない感じ、たまりません。のに全然聴けてない。「一筋縄じゃいかない」の辺りがもうちょいうまく言語化できるようになったらまた来ます。
式日散花 - Apple Music
・Song Pavilion/MUSEMENT
Apple Musicのサジェストで流れてきてええやんと思ったらカーネーションの元Dr.矢部浩志のソロプロジェクトだった。音声合成のボーカルかつかなりポップな作風だったので「これは良いの発掘したんじゃないかあ?」とか思ってたら全然大ベテランのおじさんだったのでひっくり返った。
ドラマー作曲の楽曲に対する謎の信頼感があります。
Song Pavilion - Apple Music
・馬/betcover!!
以前彼らの2nd『告白』にハマった後に前作の『中学生』や次作の『時間』をかなり能動的に聴いたのだけれどあまり刺さりきらず、『告白』が異質で本来のベットカバーの魅力は他のところにあるみたいだなあと思っていたのだけれど、去年リリースの『卵』でかなり自分の好みと折り合いがついてきて、今作でバチっとハマったような感じがする。
激情とメロウ感と気持ち悪さのバランスが(俺にとって)かなりちょうど良かった一枚。
馬 - Apple Music
今年は追ってるアーティストの新譜も結構豊作な1年だった筈なのにカーネーションとキリンジばっかり聴いていたせいで時間がない!ので全然語れるほど聴けてない。去年もう一周やらせてくれませんか。
今年もよろしくおねがいします。